最先端共同研究

遺伝子編集と幹細胞治療の実現化の為、医学研究の新しい取り組みであるパートナーシップが推進されています。

 想像してみてください。珍しい遺伝性疾患の無い世界を。DNAコードに異常のあるまだ生まれてもないわが子の運命を決断する必要はありません。想像してみてください。細胞の損傷した組織を入れ替え、失った体のどの部分でも処置できると。想像してみてください。そんな日が訪れるのにそう時間はかかりません。現在、共同研究の新時代に、企業は健康を求めてともに協力しています。DNAコードの修復と、不治の病の治療法を見つけるためのベースとなるソリューションは既に発見されています。

 その取り組みは、つい最近までは実現にはほど遠いことでした。その当時、企業はそれぞれの社内だけで研究開発を行い、画期的な発見をしても、独自の治療法として社外秘にしていました。現在は多くの企業が社外の研究者とともにチームを組み、ヘルスケア向上のための最も良い治療法を見つける為、分野を越えて協力し合っています。

 もちろん、すべての医学的発見は、使用・商品化の前には今でも厳格なトライアルシステムを条件としています。そして常に研究者は、DNA編集と幹細胞治療は神への冒涜だする批判を浴びています。

 「今はっきりわかっていることは、複数の病気を持つ患者の高齢化が進む中、ニーズや需要に焦点をあてて取り組んでいるかどうかということ、共同研究が必要であることだと思います。」とバイエルAG社役員会のケマル・マリック氏はAsia Focusに対し述べました。

 「DNA編集と幹細胞による治療法は企業間共同研究の取り組みにより実現しました。」

 バイエルは現在、共同研究により同社のCRISPR−Cas DNA技術におけるCRISPR治療の導入を見込んでいます。CRISPR-Cashageは従来の方法よりも速く、安価で、正確なゲノム編集ツールです。また、それによって遺伝学者がDNAシークエンスのセクションを除外したり、加えたり、選択することができます。

 地価総額30億USドルの合弁会社は、現在、血液疾患、失明、先天性心臓病の新薬開発のための研究中です。CRISPRセラピユティックス社は3つの注目される企業の一つで、CRISPR(短いパリンドロームの反復を定期的に隙間に置く)テクノロジーの使用方法を見つけ出し、新治療の発見を目指して製薬大手企業が共同で研究しています。

 その他2社について、エディタス・メディシン社は、世界でジェネリック医薬品の製造をしているアラガン社と共同研究をしています。またインテリッア・セラピユティック社はスイスの多国籍製薬会社のノバティス社と研究をしています。

 CRISPRの遺伝子編集システムを体内の目的地まで運ぶ手段は、今のところ、細胞から取り出したDNAを修正し、また体内に戻すという方法です。

 「DNA編集はモレキュラーシザーズといって、DNAのエラーに行き、切り取り、DNAの良い部分とそれを取り替えることです。それは見つけて入れ替えるというワープロのようなものです。」と今月初旬、NUSエンタープライズ社主催のInnovfest Unboundでマリック医師は説明しました。ウィリアム・シェークスピア作ハムレットの5,000冊ものコピーがあって、そのうち一冊だけ、「to be or not to be」という台詞が「to be or to be」と書き換えられているとしたら。その一冊を見つけ出し、字が抜けているフレーズを探し出し、抜け字部分を正しく修正する必要があるとしたら。DNA編集が行っていることはそういうことなのです。

 この導入により、体から細胞を取り除く必要なく、CRISPR治療を行う新たな方法を発見しようとチャレンジしています。それは困難なことです。なぜならば並外れた正確さが求められ、ターゲットの特定細胞に問題なく医薬品が使用されるために「非常に重要」であると、2016年1月MIT Technology ReviewのインタビューでCRISPRセラピユティックス社CEOのロジャー・ノバク氏は話しました。

 「嚢胞性線維症、鎌型赤血球による貧血、血友病は遺伝子の突然変異によって引き起こされる疾患です。遺伝子コードがきちんと読めず、エラーがある状態です。ガンもまたゲノムによる病気です。」とマリック医師は述べました。

 「これらの遺伝性疾患は潜在的にこの技術(DNA編集)によって治療できます。他の分野への応用ですか?例えばガン治療にも大いに応用力はあります。」

 もちろん、体の他の部分への「オフターゲット効果」についての考慮はあります。またマリック医師は、臨床実験は手順にそって進められるため、研究者は「かなり注意深く」なると認識しています。

 DNA選択が神への冒涜になるかという哲学的な考慮について、同氏はこう述べました。「毎度哲学者は干渉しますが、自然の摂理に偶然出てきただけなのです。石器時代の人間が病気になれば死んでいました。薬はこのプロセスに介入したではないですか。」

 「ですから、いつも医者は介入して、神を冒涜していると言えるかといえば、私はそう思いません。これまでも現に医者はそうしてきましたから。」

 他の懸念として、テクノロジーが胎芽に使用されることがあります。セオリーでは遺伝学者は背を高くしたり、細くしたり、美しい見た目にすることが出来ますが、医者と科学者が本当にそんなことをすると思いますか?「そんなことを目的にはしていません。」とマリック医師。

 CRISPRセラピユティックス社は眼科学や心臓病を含む様々な疾患への応用のためにDNA編集に対し5年で40億USドルを投資する予定です。

 バイエルもまたベルサント・ベンチャー社というベンチャー企業と共同して、2016年12月に2億2,500万USドル投資し、ブルーロック・セラピユテックス社という幹細胞治療の会社を立ち上げ、人工多能性幹細胞(iPSC)の開発研究を行っています。

 1897年にバイエルの科学者であるフェリックス・ホフマンはアスピリンを総合的に使いましたが、その後80年間すべての医薬品は研究所を本拠地として科学的に作られました。しかし、1980年までに企業はタンパク質をベースにした医薬品製造を開始し、今は生きている細胞を使用することに近づいています。それは医薬品業界にとって「第三の革命」となるでしょう。そうマリック医師は述べました。


様々な細胞は治療に活用できますが、幹細胞は唯一人体のどの細胞も分化させることができる細胞です。

「胎芽には幹細胞がありますが、それらは脳細胞になり、肺・心臓・肝臓・腎臓になる素晴らしい細胞です。」と同氏は説明しました。

 しかしながら、倫理的思考によって、特にアメリカでは流産や中絶された胎児の幹細胞の使用については、2012年までその分野での応用は慎重に進められました。2012年、ジョン・ガードン博士と山中伸弥教授は、成熟細胞は導入されると多能化するという発見により、ノーベル生理学・医学賞を受賞しましたが、この発見により、色んな異なる細胞のタイプを作ることができるようになりました。

 彼らの仮説は皮膚細胞などの成熟細胞が導入されると再び幹細胞や多能化細胞になるというものです。マウスを使った実験から開始し、その次に人間の細胞で実験しました。そして、2007年までにその仮説が正しいか確認しました。後に、戻した幹細胞は再導入され、心臓や脳の細胞になることを発見しました。ブルーロック・セラピユティック社はこの取り組みが治療に応用できるか確認しているところです。

 今年3月、失明者を対象に幹細胞をベースにした治療法の臨床実験が日本で開始されました。ドナーの皮膚細胞をiPS細胞に導入し、網膜細胞になったものを、60代黄斑変性患者の網膜に移植しました。

 医療関係者はその細胞が病気の進行を止め、その男性患者が失明を回避することを望んでいます。眼科医で、神戸にある理化学研究所多細胞形成研究センターの高橋政代氏が、率先してその移植を行い、手術は成功しました。しかし、その最終的な効果についての判断には時間がかかるでしょう。

 ブルーロック社は幹細胞を脳卒中、心筋梗塞(心臓発作と同義)、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のような疾患の治療に活用できないか検討中です。

 「これらの非常に重い疾患に幹細胞を応用すれば、実際に患者を救うことができるかもしれません。」とマリック医師は述べました。「脳卒中や心臓まひの患者について考えてみてください。わずかな輸血が患者の筋肉へ提供され、最終的には瘢痕組織となり、薬を投与するだけの治療になるのです。しかし幹細胞を筋肉組織の瘢痕組織に入れ替えて使うことができれば大変画期的なことです。」

 同氏によると、「うまくいけば」この治療法の臨床実験は来年までにはスタートできているとしています。

 「未来は今、我々が共同研究によって築き上げています。そして私はこれらの新たな技術が本当に実現されるための仮説を作りました。しかし我々はこれらのソリューションを発見するために共に協力することが求められているのです。」

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